■処分
■申立て
主文
原判決中、上告人の原審における予備的請求を棄却した部分を破棄し、右部分につき本件を大阪高等裁判所に差し戻す。上告人のその余の上告を棄却する。
前項に関する上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人西坂清孝の上告理由二の1について所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。
論旨は、ひっきょう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
同一及び二の2について
一 原審の確定した事実関係は、次のとおりである。
1 被上告人は、かねて取引のあった訴外D商事株式会社(以下「訴外会社」という。)の代表者であるE(以下「E」という。)から融資元の紹介を依頼され、以前から知合いの上告人を紹介し、昭和五九年九月ころ、上告人が訴外会社に五〇〇万円を弁済期一か月後、利息月五分と定めて貸し付けた際、Eに同行して上告人と会い、その求めに応じ、右貸金の担保のために訴外会社が振り出した貸付額を手形金額、弁済期を満期とする約束手形一遍に裏書をして上告人に交付し、同年一〇月ころ、訴外会社が上告人に右貸金を弁済して右手形の返還を受けた際もEに同行した。
2 被上告人は、同年一二月ころ、上告人が訴外会社に五〇〇万円を弁済期一か月後、利息月一割と定めて貸し付けた際もEに同行し、上告人の求めに応じ、右貸金の担保のために訴外会社が振り出した貸付額を手形金額、弁済期を満期とする約束手形一通に裏書をして上告人に交付した。
3 訴外会社は、右貸金の弁済期に弁済することができなかったため、利息を支払って借増しをすることとし、昭和六〇年一月一五日ころ、上告人から七〇〇万円を弁済期一か月後、利息月五分の約定で借り受けたが(以下「本件貸金」という。)、被上告人は、その際もEに同行して上告人と会い、その求めに応じ、本件貸金の担保のために訴外会社が振り出した貸付額を手形金額、弁済期を満期とする約束手形一通(以下「本件手形」という。)に裏書をして上告人に交付した。
4 訴外会社は、同年一月末ころ倒産して本件手形の支払を拒絶し、同年三月ころには破産宣告を受けたため、被上告人は、上告人に迷惑をかけたとして謝罪し、上告人の強い要求により本件貸金の弁済方法等につき種々尽力したが、履行されずに終った。
二 上告人は、原審における予備的請求として、被上告人は本件手形に裏書をすることにより上告人に対し本件貸金債務につき保証する旨の意思表示をしたと主張し、被上告人に対し、右貸金七〇〇万円及びこれに対する弁済期の翌日である昭和六〇年二月一六日から支払済みまで年三割の割合による遅延損害金の支払を求めた。
これに対し、原審は、前示事実関係の下において、右裏書を求めた上告人がどのような意思であったかは別として、被上告人としては、せいぜい、紹介者としての立場上、保証の趣旨で裏書をし手形債務を負担する意思を有していたにとどまり、これを超え、利率や時効期間等で右手形債務より不利であることが明らかな原因債務についてまで保証する意思であったと推認することは到底できず、他にその意思表示につき主張、立証もないとして、上告人の予備的請求を棄却すべきものとしている。
三 しかしながら、原審の右判断はたやすく是認することができない。
その理由は次のとおりである。
金銭を借用するに当たり、借主が貸主あてに担保のため振り出した約束手形に保証の趣旨で裏書をした者が、貸主に対し手形上の債務のみを負担したものか、あるいは更に進んで手形振出の原因となった消費貸借上の債務までも保証したものかは、具体的な場合における当事者の意志解釈によって定まるものである。
前示事実によれば、本件貸金は、上告人とは旧知の被上告人の紹介により始まった上告人・訴外会社間の金銭消費貸借のうち三回目のものであって、被上告人は、右貸借の都度、訴外会社の代表者であるEに同行して上告人と直接会い、その場において、上告人の求めに応じ、訴外会社振出の約束手形に保証の趣旨で裏書をして上告人に交付し、訴外会社の支払拒絶後は、本件貸金の弁済を求める上告人の強い意向に沿う行動をとったことが明らかである。
また、記録によれば、上告人と訴外会社との間で右各手形とは別に借用証書等が授受されたことはなく、上告人と被上告人との間においても同様であることが窺われる。
以上の事実関係の下においては、上告人とすれば、当初から被上告人の信用を殊更に重視し、本件手形に裏書を求めた際も、手形振出の原因である本件貸金債務までも保証することを求める意思を有し、被上告人も、上告人のかかる意思及び右債務の内容を認識しながら裏書を応諾したことを推知させる余地が十分にあるというべきである。
そうとすれば、他に特段の事情がない限り、上告人と被上告人との間において、本件貸金債務につき民法上の保証契約が成立したものと推認するのが相当である。
原判決の引用する最高裁昭和五一年(オ)第一一八七号同五二年一一月一五日第三小法廷判決・民集三一巻六号九〇〇頁は、金銭を借用するに当たり、借主がその振出に係る約束手形になんぴとか確実な保証人の裏書をもらってくるよう貸主から要求され、借主の依頼を受けた者が、貸主となんら直接の交渉を持つことなく右手形の裏書に応じた場合に関するものであって、事案を異にし、本件に適切でない。
したがって、原判決には、法令違背、ひいては審理不尽、理由不備の違法があるものというべく、論旨は、この趣旨をいうものとして理由がある。
よって、原判決中、上告人の原審における予備的請求を棄却した部分を破棄し、右部分につき更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻し、上告人のその余の上告は理由がないのでこれを棄却することとし、民訴法四〇七条、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
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